この広告のココが好き!1000本ノック

「てめーに必要なのは“好き”っつー気持ちを言葉で伝えることだ!」と言われたので始めました。見かけた広告をべた褒めします。数撃ちゃ当たる式です。

アイフル

◆場所/丸ノ内線

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紙がめくれたような画像加工が施された広告は少なくないと思うのですが、これは段違いのリアリティでした。
向かいの座席に座っていても、目に付きます。

よく見ると、紙の裏側になっている部分にニス引きされているんですよね。ニス引きってこういう効果も出せるんだ!という驚きがありました。

ただ、めくった紙とタレントさんの間にコピーが窮屈そうに収まっていて、そこがもったいないなぁと思いました。

世界卓球

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◆場所/日本のグラフィックデザイン2016(の前にも新宿駅で見たような)
◆これを伝えたかった/卓球の緊張感、卓球の面白さ

伝えたいメッセージは少なくするほどとんがって、刺さりやすくなる。みたいなことを佐藤オオキさんが書いておられましたが、これこそ、という感じです。

初めて見たのはどこかの駅で、他のポスターがワイワイ声を上げる中、このポスターだけ固唾を飲んで見守るような、極限の緊張感を感じて、引き寄せられました。
近づいて見ていると、外野からはとんでもない速さでラリーをしているように見えても、きっと選手の目には、勝負所の球はこうやって止まって見えてるんじゃないか…卓球、かっこいいな…という感情が浮かんできました。

それはきっと、少ない色と淡いグラデーションと濃いめの影の組み合わせでイラストと実写の中間のような、不思議な空気感を作っているのが一番大きいんじゃないかな、と思います。
また、最初の一枚以外は、ラインが全部外まで続いてるんですよね。これのおかげで、紙の面積以上に空間の広がりを感じられるし、見切れていない球がしっかりと主張しています。

ぼんやりと感じる「卓球って面白そう」という感覚はしっかり作り込まれているからこそ、受け取れたのかも。

展示だったので、答え合わせが出来たのですが、伝えたかったことは「卓球の面白さ、スピード感」だそうで、メッセージを一つに絞ってそれに集中することは、結果としてメッセージがとてもシンプルになるんですね。それは、伝わりやすいだけじゃなく、誤差なく伝えられるんだなぁと思いました…言うは易しです行うは…笑
でも、この気づきは絶対に忘れないようにしたいです。

キリンビール/GRAND KIRIN GALAXY HOP

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場所◆銀座線/中吊り広告
コレが伝えたかった?◆「グランドキリンシリーズを通して、季節のうつろいを感じ・楽しんでほしい」
 
シーズンごとに、フレーバーを変えてリリースされるグランドキリン。新しい味と一緒に、パッケージや広告を楽しみにしている人は、私だけじゃないと信じたい笑
 
トロピカルなグラデーションで表現されたマジックアワーは南国のような華やかさで目をひきます。多分この広告で一番好きなのはここ。夏の高揚感にぴったりだし、ビールの香りや味の華やかさまで期待が膨らみます。
スペースシャトル?に例えられたビール瓶が煙を吐いて飛んでいくところも、イラストで表現されているから違和感が優しくていいなぁと思う。
 
このシリーズものの中吊り広告は最初の頃から少しイメージが変わっていて、これまでの広告は商品写真を大きく使って、パッケージデザインと連動した絵作りがされていました。
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オールシーズン置いてあるグランドキリンのパッケージリニューアル(2016年3月)に合わせて、パッケージと関連しつつも切り絵のテイストで独自路線を進み始めた、というので多分間違ってないはず。
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「コンビニで手軽に買える、キリンの作るクラフトビール*1」というイメージはもう広く定着したので、「新しいビールであること」よりも「季節のうつろいを一緒に楽しむもの」として情緒的な方向に振り切ったんじゃないかなぁと感じました。
切り絵って絵葉書とか民芸品のイメージを連想させて 、他のイラスト手法に比べて“季節感”を演出しやすいように感じます。だから余計そう感じてしまうのかな。抱いてもらいたいイメージに向かって、様々な媒体はビジュアルを丁寧に束ねていくことが、ブランドイメージにつながるのだというのを実感する、素敵な広告でした。

*1: 大手酒造が作ってるので、グランドキリンクラフトビールの定義からは外れるはずです。ただ、狙ってる市場は近いし、妥当な表現が思いつかなかったので、ご勘弁を。

大磯ロングビーチ

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場所◆西武新宿線/中吊り広告
これが伝えたかった◆夏のレジャーはやっぱりプール!大磯ロングビーチの、海にも負けない開放感。

裏から見ると反転しているので、クリア素材なのかな?ギラッとしたコントラストの強い色彩が情報過多気味の電車内でも目をひきます。海と空の青い部分が半透明で、青空から透けて見える電車の車内灯がまるで夏の太陽!かっこいい〜〜〜!!

写真と「OISO LONG BEACH」の文字だけで構成された思い切りの良さもいい…!大磯ロングビーチの雰囲気が全力で伝わってきます。

細かく見ていくと、プールのビジュアルは広告の左上・右上を光源としても違和感のない影の付き方、パラソル部分の逆光気味の処理が丁寧で、素材のインパクトをいかすために、しっかり作ってあるなぁと思います。
さらに、フォントも主張の強くない細めのサンセリフ書体でビジュアルを邪魔しません。だけど、光を通さず真っ白なのはそこだけなので文字にも視線が向く…絶妙なバランス感!

この丁寧な作業がインパクを支えているのですね…

ビビットな色彩は目をひくし、SNS映えもするのか、反応もちらほら


みんな好きだね!私も好きだよ!

レジャーの広告全体に言えることかもしれないのだけど、「プール行きたいなぁ」と既に考えている人に大磯ロングビーチを選んでもらう必要と、「週末は家でゲームと思ったけど、プールいいなぁ…大磯ロングビーチか…」とそもそも“プールに行くこと”を選んでもらう必要があるなぁと感じています。
そういう意味で「こんなにあちーじゃん!夏っぽいことしようぜ!!」と大磯ロングビーチだけでなく、プールや海に行くことから後押ししてくれるような、素敵な広告だと思います。

カゴメ/カゴメ野菜生活

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山手線・鶴見線/電車内広告

完成度が高いなぁ、としみじみよかったもの。
鮮やかな野菜を使ったビジュアル→程よく強弱をつけながら大きく配置された見出し→野菜生活の写真…目に入った瞬間に大雑把な内容が理解できるので、つかみはバッチリ。気持ちよく読めます。

人参と赤キャベツの写真は合成?画像補正?がされていて「つい気にしてしまう」程よい違和感だし、野菜の鮮やかさもあって人目をひく綺麗なインフォグラフィックですね…すごく好きです。

 文字部分は見出しの文字の強弱、行末を成り行きに(組み方の名前があった気がするけど思い出せない…)するリズム感、そして野菜と連動する文字色も可愛いなぁと思います。黒にすると読みやすいけど、重たくなりすぎるような気がします。全部赤っていうのも面白みがないし、野菜を引き立たせるほんのり暗めの色…さらに全体のぱっと見の色数を減らしてバランスよく見せる効果もあったりするんでしょうか?勉強になります。

そして最後、カゴメ野菜生活のパッケージ。裁ち落としになってるんですよね。おかげできっちりし過ぎず、うまく視線を外に流してるような気がして、一枚に結構ぎっしり情報入れているのに、息苦しくないように感じます。中に収めようとすると小さくなりすぎるだとか色々あるんだと思うんですが、このハズしがすごく好きで、きいてるきいてる!となって、なぜか見てる私が嬉しい笑

個人的に文字がぎっちりしてる電車の中の広告、暇つぶしになって好きなんですが、マクロ視点とミクロ視点の合わせ技で、すごく繊細に作られているんだなぁとしみじみ思いました。

大塚製薬/オロナミンC「充電しとく?」

 

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新宿駅地下通路の広告スペースにて。
 
かわいい。動物の写真はずるい。
 
 5種類の動物がぐったりしてる写真に、5種類のコピー。

“よく「夏は楽しまなきゃ」とかいう人が苦手です。”

“今年も、週末にSNSを見るのがストレスになる季節がやってきました。”
みたいな脱力コピーがゴシックで字間広めに入っていて、ぽつりとつぶやきが漏れた感じが写真とマッチしてます。ここが多分一番好きです。
 
このつぶやきコピーは小さすぎて、近づかないと読めないのですが「充電してる?」と写真のぐったり感、電池の減ったアイコンの3要素で遠くからでもわかりやすいのがいいですね。
 
そして、よく見るとロゴの枠でトリミングされてますね。実物見たときは気付きませんでしたが、遊び心が素敵。
 
エナジードリンクってダークな背景+ビビッドな差し色でゴリゴリアゲてく捕食者系の広告が多いように思います。
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そして、この肉食感、ちょっと食傷気味だったり…
オロナミンCは昔からある安心感のあるブランドだからこそ、逆張りの脱力系広告が効いてくるのかなぁなんて思いました。